Pages

Wednesday, September 22, 2010

007. speak forとSM展



昔からspeak forが好きです。

あれってもう10年前くらいのような気がするのだけど(最近何でも10年前って言っておけば大体合ってるんですけどこの現象は一体何なのか)、Big MagazineやBLESSの展示など、秀逸で勉強になるものが多かったなー。サイズ感やニュートラルな温度感、日本/海外のバランスとか物販の感じも含め、色々なものが「丁度良い」ギャラリーです。

ギャラリーってなかなかニュートラルな感じのものがない、ニュートラルというと語弊があるけど、モダンということかな?美術館は抵抗ないのに、ギャラリーになるとちょっと退いてしまっていた当時の私にとって、作品を売りつけられるとか、オーナーの好みが(よくも悪くも)反映されすぎているクローズドなスペース、という印象のある場所でした。今は色々ありますけどね。当時も色々あったのかもしれないけど…。銀座の資生堂のギャラリーくらいだったんじゃないですかね、好きなのは。

大学卒業して一週間くらいNYに旅行したことがあるんですが(家族で)、そのときSOHOをひとりで歩いて、こんなにギャラリーってかっこいいものだったんだって衝撃を受けたことがあります。美術館もしかりで、触るのも撮影もある程度自由だったりとか。日本はどうしても「名作を鑑賞させていただきます」「著作権発生しております」みたいな、一見下からの卑屈な目線というか。そういうのがベースにある場合が多くて、しかもそれが当たり前だと思ってたので、エーーーみたいな。

さすがに10年以上経った今では全然違いますけど。日本のいいギャラリーもいくつかわかるようになりました。し、逆にNYのギャラリー事情は知らない…。

で、speak forなんですが、いい意味でお客さんを放っておいてくれるので、その距離感がとても心地よい。作品とお客さんとスタッフの距離の取り方が丁度良い。作品とスタッフもくっつきすぎてない。ポリシーあるのに開かれてる。という感じですかね。ずいぶん行っていなかったのですが、2月にあったオオシマタカオさんの写真展「U FACE」で、久々に足を運びましたら、物販はなく、B3からB2に移動していたことを除けば、空気感含め全く変わらず、とても落ち着いて見ることができて、気付けばオオシマさんの写真を購入している自分がいました。

ーー

で、現在開催されているのがこちら。





Shoda Masahiro SM展
2010年9月17日(金)- 29日(水)11:00-20:00 毎週木曜休



まず思ったのは、あ、この人同世代だなってことなんですけど、写真に対する愛情みたいなものなのかな?そこに共通する世代感みたいなものがある。やっぱり、写真というものをはじめて意識したときに、そこに既にデジタルがあったか、なかったかというのはとても大きいと私は思っていて(それは音楽についても言えるかもしれないのだけど)、結果としてどちら(あるいは両方)を選択したとしても、それっていうのはもう決定的な違いを生むのですよね。
私はもちろん、大学時代は基本ポケベルって世代ですから。はい。

DMにも使われている、女性が横たわってる写真が私は大好きなのですが、これだけだと一見Purple風というか。でも全然違う。この作品のUneasy Connectionシリーズじたいもそうではなかったし、展示の内容は全部で5つくらいのセクションに分かれていて、全然Purple系の詩的な感じではなかった(もちろん、いい意味で)。
Shodaさんの写真はとても静か。静寂であり、静止であり、特にStreeterのシリーズ(大好き!)は、Philip-Lorca diCorciaのようなしんとした感じがありました。2極化できない何かがそこには在って、それはニュートラルとかいうことではなく……。何なのかなと思っていたのですが、帰ってShodaさんのサイトを見てみたら、そういうメッセージ性があるのかーと納得。

どのように撮られたものでも、写真って、こうして現像して、引き延ばして、自分の目の前でちゃんと対峙して見るっていうのが大事というか、それなくしてどうする!みたいなことを凄く思った展示でした。
2月のオオシマさんの展示のときも思ったけど、やっぱり私は写真が好きなのだなー。でも意外とそういうことを思わせてくれる展示って少ない。おかしなことだけど。

29日までなので、みなさま是非。
ちなみにShodaさんの次は長崎訓子さんだっ!

Sunday, September 12, 2010

006. 木の存在





もともと、私は「木」が好きなのかもしれない。と思う。

生まれ育ったところはどちらかというと海がとても近いのだけど、殆ど行かなかった(今思えば勿体なかった、かもしれない)。
昔から、美術の授業で写生といえば木の絵を描き、写真を撮り始めれば木と空を写し、お香は何よりもサンダルウッドを好み、神社に行けば木に話しかけていた。ような気がする。怖いっつーの。って感じですが。全部無意識に。

だからってナチュラル志向みたいな、カントリーテイストとか全然好きじゃなかったですけども。

海より山のほうが落ち着く、と気がついたのは20歳を過ぎてからで、何か神聖な「しん」としたものを与えてくれるのが「木」であるということに気がついたのは、それよりもっと後のこと、になる。
更に、陰陽五行説でいくと私は「火」で、「木」は「火」を助けてくれる存在らしい。そういうことも関わっているのかもしれない。ということを認識したのは、それよりもっともっと後の、ここ数年のこと。それで思い返すと、色々腑に落ちたりして。
このブログの名前を「Diamond Tree」にした理由もそこにあります。

まぁそれは個人的な話なのですが、木というのはとってもよい存在で、お気に入りの木を探して、定期的に会話したり、抱きついたり(が難しかったら触れたりとか)、変化を感じたりするとパワーがもらえるというのはあるみたいです、一般的に。別に五行が「火」じゃなくてもね。

ちなみに私はシニフィアン・シニフィエの前に居る木がとても好きです、近いところでは。

−−

香りについて。

今や接していて落ち着くのは天然のEO(エッセンシャルオイル)や芳香蒸留水。ですが、天然/人工問わず、香り全般について興味があるし、好き嫌いもはっきりしているほうだと思います。
もともといわゆるフレグランスの世界では、フローラル、グリーン、シプレー、マリン、フルーティ、とか全部好きになれなくて、ウッディとスパイシーだけ。個として興味はあるけど、自分が使うのはそのふたつがベースじゃないと無理。みたいな感じでずっと何年もコムデギャルソン(1)でした。

オーガニックコスメなどに触れるようになってからだいぶ嗜好の幅も広がり、フローラルなんかでも特にダマスクローズやネロリなんかは大好きになり、いわゆるハーブ系全般OKな感じなのですが、やっぱり樹脂や木の香り、スパイシーな香りが最も好きというのは変わらない。
で、天然の世界だと、そういう系の香りのバリエーションが見えるというか。ブラックペッパーやパチュリ、ベチパー、ローズマリー、カルダモン、サイプレス、ホワイトセージ。樹脂系だとベンゾイン、サンダルウッド、ミルラ、そしてフランキンセンス。
そういう香りというのは、瞑想なんかに良いのですよね。精神に深く働きかける感じもとても好みなのだと思う。でもそれが何でなのかというと、もしかしたら木からきているからかもしれない。

何かこう、木の香りとか森の香りとかってなったときに、森林浴とかマイナスイオンみたいな感じに行きがちだけど、それって葉っぱというか。そうでなく、もっと木の幹の香りというのがあるのですよね。
でもそれって再現がとても難しいのだろうなと思う。

例えば香水。
私は天然じゃないとムリ!みたいなタイプではないので、今のところ好みのものを見つけられていて、特に不自由感じていませんが、天然じゃないと絶対にダメ、という人が好みの香水を探すのは至難の業。更に、天然の香りは持続性がないし、フレッシュな状態を保つのも難しい。香りも(香水としては)弱い。
ちなみに、出しているところ、知っている限りでは、アグロナチュラ、ファファラ、パティカ、アンティアンティ、くらいですかね。
こうして作っているところでも概してフローラルが多く、樹脂系の香りで天然の香水なんて、なかなかお目にかからないです。
ま、それだけニーズが少ないということもあるのかもしれないですが。みんなそんなに瞑想とか精神世界とか求めてないですもんね多分。

何かオチの無い感じですが、ほんとはフランキンセンスについて書きたかった。また次回としたいと思います。

Friday, September 10, 2010

005. パピエラボの印鑑



正確には昇文堂の印鑑。
こちらに詳しく説明されとります。

印鑑って、みなさんどうされてるんでしょうか?
私、印鑑とか保険とか印鑑証明とか戸籍とか名義とか貯金とかそーいうのに、ほーんとーうーにー、うとくってですね、全然興味がないというか、気にせず生活してたらこの歳になっちゃったみたいなパターンなのですが、あれは5年くらい前かな。山本印店の話を立て続けに色々な人から聞いた時期がありまして。

山本印店というのは三宿にある印鑑屋で、おっさんがやっているんだけど、今まで使っていた印鑑を持って行くんだよね。で、新しい印鑑を作ってもらう際に、今まで使ってきた印鑑を見せるのだって。そうしたら何故か未来とか色々なことを占ってくれるらしい。占いもさることながら、その印鑑があれば諸々の成功が約束されているのか、前日の昼12時からのみ(!)しか予約を受け付けないにもかかわらず、遠方からも政治家や経営者がこぞって作りに来るとか。ホンマかいな。私の周りにも4〜5人作った人が居て、デザインもすばらしい。というのは知ってる。

私も何度も作ろうとしたのですが、もう、全然繋がらない。電話が。おっさんが念力か何かで選んでるという噂で、呼ばれていれば繋がるということみたいなんだけど。ワンコールで繋がった友達とか居たのだけどなんなのかしらね。まぁそんなこんなで、山本印店の印鑑は作って(というか作れて)いません。でも、山本さんのおかげて印鑑というものに興味を持ちはじめたのは確か。

で、PAPIER LABO.のお店が出来たころ、行ったときにこれだーーー!って。ひとつひとつ、薩摩のつげの木を使って、昇文堂さんにしか彫れない文字で作ってくれるという。

なによりその印鑑から出ている気のようなものが、とてもニュートラルで美しいなと。

改めて考えてみると、印鑑って、やっぱり、すごく大事なものだからというのもあると思うのですが、どうしても「黄色の財布で開運」とか「売りつけられる家系図や壺」だったりとか、何か、これがあなたのこれからの人生を守ってくれますよ、っていうことなんだけど。それがギラギラしているというか(値段的にも)、結局「運」ではなく「幸運」とか「開運」とか「お金」とか「玉の輿」とかですか?そっちに行きがちなものだよなーと。何か金で出来た招き猫や水晶玉みたいに球状に磨かれたパワーストーンなんかとセットです、みたいな。私が苦手だなと思っていた理由というのも多分そこで、言い方が悪いのだけど、そういうツールになりやすい。結局誰かがお金を儲けるためのツールということなのですが。

でも昇文堂の印鑑はそういうのいっさい感じない。もちろんそういう印鑑って沢山あるとは思うのだけど。私が知らないだけで。

というわけで作ったのです。3年前くらいに一度。まーでも訳あって姓が変わりましたのでここでふたたび作ったわけです。訳あってってそれは離婚なんですけどね。

それでもって、また姓が変わったときのために、昇文堂さんには是非印鑑を作り続けてほしいのであります。って、そんな仰々しいときだけでなくとも、プレゼントなんかにもとてもおすすめ。
もう私は山本印店で印鑑を作りたいと思うことはないと思う。(実際「山本印店で作れなかった人が昇文堂の印鑑作るって話はよく聞きます」って当時パピエの方は仰ってました)

とても人気なのと、ひとつひとつ図案考察→手彫りなので、出来上がりまで3ヶ月くらいかかるかな?といったところですが、印鑑をお探しの方、そうそうパピエで作ってみたかったのよね、という方は是非、是非。
なによりこういうものを紹介するPAPIER LABO.のセンスが私は大好きです。

作るプロセスなんかはこちらにも載ってます。

*****
PAPIER LABO.
SAB LETTERPRESS
*****

Saturday, September 4, 2010

004.「モードは掟を破る権利がある」





クレンジングは色々使ってみるのですが、結局ここに戻ってしまう。
シュウウエムラのクレンジングオイル。

シュウウエムラの商品にマスターピースは数あれど、クレンジングオイルはそのなかでも特別。私がこのオイルを使いはじめたときは、まだ黄色いやつ1種類だった、と思う。なのだけど、今ってこんなにあんのね

6種類だって!みなさん選べるのかしら?
薬用もある。スゴイネー。

この年表を見ると、私が使いはじめて15年以上経ってるということになります。このオイルの他に、こんなに長く使い続けている化粧品ってない。そしてこれからも、他のものを色々試したとしても、クレンジングに関してはここに戻るんだろうなって思っている。接客のときも「会社辞めてもこのクレンジングオイルだけは永遠に使い続けます」って言ってたなー。昔。
(ちなみに2002年に出たオレンジ色のエンリッチドがいちばん好き)







クレンジングオイルは肌に良くない。という説が、ここ何年かでコンスタントに浮上している気がする。毛穴が広がる原因になるとか、肌に刺激になるとか負担になるとか、そんな理由で。根拠や真偽のほどは定かではないけれど、私はこのクレンジングオイルを使い続けて肌が美しい人を何人も知っているし、そういう説を信じたことはない。(他のクレンジングオイルを使う気にあまりなれないのも事実だけど)

ただ「シュウウエムラのクレンジングオイルが苦手」って場合は、だいたい使用量が少ないか、乳化をきちんとやっていないか、のどちらかのような気がする。

とにかくクレンジングオイルは量をケチるとろくなことがない。摩擦による肌への刺激が懸念されるし、乳化もきちんとされないから洗い上がりも気持ち悪い。
シュウウエムラのクレンジングオイルなら4プッシュが基本。この量を肌に伸ばしていくと、なめらかでテクスチャーも最高です。
それから乳化を丁寧にしないまま洗い流すと、これまた肌にオイル感が残ってすっきりしない。当然肌への負担にも。ここは気をつけるべきポイントです。

でも、それされ守ればという感じで、W洗顔はいらないし、マッサージ効果もあって血行促進に繋がるし、ハードなメイククレンジングから洗顔のみの場合まで、どんなケースにも対応。これひとつあると、とても安心なのです。

肌が唯一持っていない能力。それは、汚れを落とすこと。なので、クレンジングはとても大切。逆にちゃんと落としていればあとはどうにでもなる。というのはちょっと乱暴だけど、そのくらいクレンジングは重要です。

あと、シュウウエムラのクレンジングオイルのベースはミネラルオイルなんだけど、これはすなわち石油由来のオイル。で、石油は悪なのかどーなのか、という話になりますが、こちらは答えが出せていないままです(私の中で)。
というか、石油も天然成分だよね?というのは常々思っている。もちろんミネラルオイルというのはそこから精製とか色々されているわけですが、ひとまず肌にとってどうだめなのかというのは全然わからない。
あとは界面活性剤問題。乳化できるということは界面活性剤が配合されているということに他ならないわけですが、私は界面活性剤については反対派ではまったくないです。
このへんの話はまたいつか。いずれもとてもデリケートな問題だと思います。

結局、肌に合う合わないは自分で試してみることが肝要。スキンケアに限らず、化粧品に限らず、なんでもそうなんだと思います。情報は便利だしありがたいものだけど、あくまでも一期一会という感じを忘れないようにしたい。

--

マスターピースって古くならない。
音楽でもそうだけど「そのパクリ」は古く、ダサくなっていくけど、本家本元はいつ聴いても素晴らしい。
化粧品も同じだと思う。例えばRMKのリキッドファンデーションや、アルビオンのスキンコンディショナーなんかもそう。これだけ毎年毎年色々進化している中で、ずっと同じものを売り続けている。当然支持されているからなんだけど。素敵なことだなと思う。し、誤解を恐れずに言えば、本物なんだと思います。

マスターピースを持つブランドは強い。

シュウウエムラに教わったことは沢山ありますが「道具は本物しか使うな」「モードは掟を破る権利がある」というのは身にしみています。
クレンジングオイルも、今でこそスタンダードだけれども、シュウウエムラがハリウッドから日本に持ってきた当時は、コールドクリームで拭き取るのが主流。オイルで顔を洗うなんて!となかなか支持されなかったそうです。

今でこそ、クリームで拭き取ってメイクを落とすなんて、どんなに肌に刺激があるだろう、と思ってしまいます。面白いものです。当時異端だったものがスタンダードになり、マスターピースになる。というストーリーは小気味良く魅力的だけれども、それは今の場所から眺めている(結果がわかっている)から。
リアルタイムで実践出来る人はとても限られているというか。

大竹伸朗さんがMOTで展示をしたときに「やり続ければMOTで展示ができるなんて保証はなにひとつない中で、ひとりで、長い間、どれだけのことを続けられるか。それが出来るか出来ないかなのだ」というようなことを仰っていて、それも同じことだなぁと思います。